見て、感じて、考えて――中学生が出会った「土佐清水の力」【土佐清水食品株式会社 編】

清水の魅力を知り、広める はじめの一歩

 中学2年生は、土佐清水のよさを、”地域の力”として働くかたちに変えていくために活動を進めています。まずはその魅力を実際に見て、感じて、知ることから始めようと、地域の企業や団体のご協力を得て訪問させていただきました。今回は、「土佐清水食品株式会社」さんでの体験をご紹介します。

メジカ節ができるまで:煮熟工場での実習体験

 煮熟工場では冷凍メジカを解凍し、ゆでて冷ました後に皮や骨を取り除き、4つの節に分ける作業が行われていました。この工程を、代表者2名が実際に体験。ある生徒は、父親が土佐清水食品に勤めているものの、こうした作業に直接触れるのは初めてだったそうで、「あたたかい」「やわらかい」と驚いた様子で魚を扱っていた姿が印象的でした。
 生徒たちが1匹あたり1分ほどかかるところを、作業員さんたちは10秒ほどで美しく仕上げており、まさにプロの技。その中には、ベトナムから来た技能実習生の姿も多くあり、多国籍の力が地域の産業を支えている現実も見えました。

「作りたい」と「求められる」の間で:開発担当者からの学び

 工場見学のあとは、開発担当・平林さんからお話を伺いました。

 商品開発では、「プロダクトアウト(自分たちが作りたいものを作る)」と「マーケットイン(お客さんに求められるものを作る)」の2つの視点があり、この2つのバランスが大事だということを学びました。例えば「土佐酢」という商品を開発したとき、お客さんに使い方を尋ねられ、「ポン酢のように使えますよ」と説明したら「じゃあポン酢を買うわ」と言われたそうです。どれだけ想いをこめて作っても、お客さんのニーズに合わなければ売れない――その現実と向き合いながら、何度も試行錯誤を重ねているそうです。

「作りたい!」をかたちに:模擬商品開発ワークショップ

 その後、2グループに分かれて、新商品開発の模擬会議に挑戦しました。「高知の名産を使う」「ターゲットを明確にする」「おすすめポイントを考える」という三つの条件のもと、自由な発想で新しい商品を考えていきました。
 あるグループからは、「ペットと一緒に食べられる商品」というユニークなアイデアが生まれました。 
 「忙しいときに自分も食べつつ、ペットにもあげられるもの」や「一緒に夕食を楽しめるもの」といったニーズを話し合いました。
 「清水で水揚げされた魚をフレークにしたものをメインにしたい」ということから、当初は「ペットに大人気のあのペースト状のおやつのようなものはどうか」という声もありましたが、「それはちょっと人間は食べたくないかも……」という意見が出て、「ふりかけ」にアイデアが進化。
 清水では色々なかんきつ類が作られているということもあり、「風味づけにその皮を混ぜてみてはどうか」という案も出されました。ところが調べてみると、犬にはかんきつ類の皮はあまり良くないことがわかり、食材の見直しが必要に。ペットと人が一緒に安心して食べられる商品をめざして検討が続けられました。
 実際の開発さながらの検討を重ね、決まった商品名は「ワンかけ」。ワンちゃんにひとふり、わたしもひとくち、一緒に楽しむ、清水のごほうび……そんなコンセプトの商品をイメージしました。

 残念ながら時間切れとなりましたが、「楽しかった!2学期もやりたい!」という声もあがり、創造の喜びを感じる貴重な時間となりました。

命のめぐりを感じて:リサイクルセンターの見学

 最後に隣接する浦尻残渣加工施設(リサイクルセンター)を見学しました。先ほど解体したメジカのアラなどが、ここで油や肥料・飼料などに生まれ変わっています。
 見学のはじめは、魚のアラ特有の強いにおいが漂っていましたが、最終的にできあがった油は、ほとんど魚のにおいを感じないほどになっていました。この油は、工場から出るにおいを処理するための脱臭用ボイラーの燃料として使われており、周囲の環境への配慮にもつながっています。

 以前はこうしたリサイクルを外部の業者に委託していたそうですが、今では自社で処理できるようになったとのこと。その取り組みを嬉しそうにお話しする工場長の姿や、魚を余すことなく活用する仕組みに、生徒たちも深く感心している様子でした。

生徒の感想より

  • 「商品開発の大変さや工夫の面白さを学べた。これからの総合的な学習の時間の学びに活かしたい」
  • 「商品を選ぶとき、ターゲットやデザインも重要だと実感した」
  • 「清水の商品の作られ方や開発の裏側を知って、改めて魅力を感じた」
  • 「見た目やデザインも含めて、“届け方”が大事だと感じた」

 また、土佐清水食品さんが試食させてくださった「カンタンだし」を使ったお味噌汁も大好評。「買って帰りたい!」という声も上がるほどでした。味だけでなく、企業の人たちの心配りや温かさも、生徒たちの心に残ったようです。

見て、感じて、考えて――動き出す2学期へ

 改めて、清水にはすばらしいものがたくさんあり、それを”地域の力”として働くかたちに変えていくために奮闘している人たちがいることに気づいた子どもたち。作り出すことの大変さや面白さも実感することができました。
 この体験を出発点として、「自分たちに何ができるのか」「これからどんな行動をしていくのか」を、2学期に向けて考えていきます。
 地域の未来を見つめることは、きっと自分自身の未来を見つめることにもつながります。ここで得た気づきや学びを、これからの一歩へとつなげていきます。