先輩に聞く

アメリカフェアヘイブン姉妹都市交流

 土佐清水市は、ジョン万次郎のつないだ縁で、アメリカのフェアヘイブンと姉妹都市提携を結んでおり、昭和63年度からは、清水高校生の希望者が姉妹都市を訪問し、現地での交流を行っています。3回目の平成2年(1990年)には初めて中学生も参加し、総勢25名の派遣団となりました。
 今回は、姉妹都市交流がその後の人生にどのような影響を与えたのか、当時交流に参加された方のお話を紹介します。

フェアヘイブンではどんなことをしましたか?

 当時中学生で姉妹都市交流のホームステイに参加させていただきました。フェアヘイブンの市長さんを訪問したり、新聞社を見学したり、お祭りに参加して浴衣で山車(向こうでは「フロート」と言っていました)に乗ったり……本当にあっという間の約10日間でした。

ホームステイで困ることはありませんでしたか。

  ホストファミリーの家では日本人は一人なので、家庭に入ったら自力でコミュニケーションを取るしかありません。生活の中に入らせていただいて、朝起きてから寝るまで、生活の中で必要なやりとりを英語でしなくてはならなかった。
 そんな状況で困ったことも無くはないはずなんですが、実は思い出すことができません。伝えたいことを全部伝えられたわけではないと思うのですが、なんとかなって帰ってきて今があります。多分、「なんとしてでも伝えなくちゃ!」という状況だったので、色んなことをジェスチャーでもなんでもして伝えようとしたのだと思います。
 数日間過ごして、言われたことを聞いているうちに慣れてきて、自分でも使ってみることができるようになりました。

 中学生だったので英語に関する知識はそんなに多くはありませんでしたが、それまでに学校で習ったことが現実に結び付いたり、学校では習わなかった言葉を知ったりできたことも、ホームステイならでは。
 例えば家の中も自分の家とは全然違っていて、トイレとお風呂と洗面所が同じ場所で。「お風呂入っている時に他の人が使うことになったらどうするの⁉」みたいな。靴を脱がないとか、知識としては知っていたけれど、目の当たりにすると「ベッドルームまで靴で入るの⁉」とまた違った驚きがありました。
 そんなふうに、たくさんの「へぇ~」に出会えるのも、そこで生きている人の生活を体験させてもらえたからこそだと思っています。自分の今までの「あたりまえ」と違う「あたりまえ」があるのだということを知られたし、その違いを楽しむことができました。

一番心に残っていることは何ですか?


 友だちのホストファミリーがお家に招いてウェルカムパーティをしてくださいました。でっかい家にでっかい庭、そして丸いプール……。その時、現地の子供たちがプールに入りに来ました。私が話しかけてみたら、ちゃんと通じてやり取りができたんです!
 大人が相手だと、頑張って聞き取ってくれてるのかなぁ?と思うこともありますが、子供にも私の言いたいことが通じたんです。「やっぱり英語は通じるんだ!」と、とても嬉しかったです。

ジョン万次郎についてどう思いますか?

 この経験は、ジョン万次郎抜きには語れません。
 ジョン万次郎の賢さとか勤勉さ、柔軟性が彼の将来の道を切り拓きました。魅力的な人柄がホイットフィールド船長に気に入られ、アメリカの地に降り立った初めての日本人の一人になりました。今とは全然違う、異国のことが全然わからない時代にそんなことができるなんて……。
清水にいた頃、ジョン万が書いたという英会話の本を見た記憶があるのですが、例えば「良き朝にござるよ、旦那」、私たちは辞書があるので「Good Morning」の意味が分かります。しかし、そういう知識が全くない時代に、自分が経験したこと感じたことから「こういう意味なんだな」とイメージを作って辞書を作る。
 ジョン万次郎のおかげで土佐清水市とフェアヘイブンがつながり、そして私は貴重な経験をさせていただくことができた。本当にありがたく思います。

ホームステイに行ってよかったと思いますか。

 行かせていただいてよかったです。身をもってそこで生活させていただいたことで、そこにフェアヘイブンというが町がある、そこに住んでいる人たちがいる、そういうことが具体的に感じられるようになりました。
 ジョン万がそこにいたということは、ぼんやりと知っていたけど、それはあの町なんだ、そこにあの人たちがいるんだ、と親近感を覚え、愛着が湧いたというか、その後も地図帳で探してみたり、現地の天気を気にするようになったりと興味をもつようになりました。

英語における学びはありましたか。

 もともと英語は好きでした。行ってみて現地の人たちの発音を聞き、違いを知りました。例えば「What」ですが、最後の「t」を発音すると思っていました。でも現地の人は発音しませんでした。おもしろい!と思って、より発音に興味を持つようになりました。
 

ホームステイはおすすめですか?

 ぜひ多くの人に行ってほしいと思います。今なら日本にいてオンラインで英語を学習することもできますが、レッスンが終わると日常に戻ります。授業中だけではなく生活も英語でするしかない、しかも自分の力で何とかするしかない状況に身を置くことで、脳が切り替わるんじゃないかな、と思います。
 私は短期の交流ホームステイでしたが、半年や一年間留学すると更に良い経験になると思います。私が学生だったら行かせてもらいたいです。清水市の取り組みということで補助もあり、安心感があると思います。ぜひ行ってください。

中学生・高校生にメッセージをお願いします。

 一つ目は、若い時に異文化にふれてほしいということです。言語は文化の一つなわけですから、学校で英語を習うということは、言異文化体験を授業でしているのだと思います。
 例えば、英語には日本語にはない単語があります。逆に英語にはなくて日本語にはあるものもあります。なぜなんだろう、と違いに目を向けるなかで、その文化において大事にされているものがなんとなく分かったりします。そういう経験を通して、自分が当たり前だと思っていることが、他の人にとってはそうではないということに気づくことができます。
 一方で、文化は違っていても、共通することや共感できることもあります。同じところで笑ったり、驚いたり。一緒に協力することもあるし、一緒に楽しむことだってできます。
 異文化に触れることでそんなことを感じられれば、互いに尊重しあうことができるようにるのではないかと思います。

 二つ目は英語についてです。英語って本当に便利です。多くの国で英語を使えばコミュニケーションを取ることができます。ですが、英語は世界にたくさんある言語の中の一つにすぎないんです。他にもたくさんの言語があって、それらの中に優劣はありません。英語が世界で通じるからといって、日本語や他のもっと少数民族の言葉が劣っているわけではありません。そのことを覚えておいてほしいなぁと思います。

インタビューへのご協力ありがとうございました!

 ウン十年前の経験にもかかわらず、まるで昨日のことのように話してくださいました。それだけ楽しく充実した日々だったんですね。
 その後の人生も豊かにしてくれるホームステイ、ぜひ多くの高校生に経験してほしいと思います。

姉妹都市交流費補助

 土佐清水市では、現在でもこの交流事業を行っています。ただし、現在は対象が清水高校生のみとなっています。詳細は土佐清水市教育委員会までお問い合わせください。